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運命を変えることは可能なのか

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人の運命は、すでに決まっているのだろうか?

生まれ落ちた国や家族、性別など、自分では変えられない要素があるのは確かだ。

それでは、生まれた後の運命は果たして変えられるのであろうか。

中国・明の時代に実在した学者・袁了凡(えん・りょうぼん)は、自らの努力で運命を変えた経験を書き残している。

袁は、幼いときに父を亡くした。袁が青年になると、彼の母親は彼に、儒学ではなく医学の勉強を薦めた。医者の方が収入が見込めるし、人々を助けることができるからだ。

 

ある日、袁が慈雲寺へお参りに行くと、道士のような身なりをした老人と出会った。自分のことを孔と名乗るこの老人は言った。「貴方は官界に属しています。来年、試験に合格して朝廷へ行くことができるでしょう。なぜ、勉強をあきらめたのですか?」

 

その夜、袁が孔老人を家に招くと、袁の母は言った。「先生は、人の運命を占うことができると聞いています。ぜひ、息子の運命を占って下さいませ」。孔老人は請われるままに、袁の過去を的確に言い当て、将来についても語った。それは、袁が今後、官吏の試験に及第する年や席次、朝廷に仕える年数にいたるまで、詳細にわたる予言だった。孔老人によれば、袁は最後に省の長官になり、3年半の任期を終えた後、退職して彼の故郷に帰ってくる。その後、彼は53歳を過ぎた8月14日、午前1時から3時の間に亡くなるだろうと孔老人は語った。たったひとつ、袁の人生で残念なことは、息子が生まれないことだ、と孔老人は付け足した。

 

袁は孔老人を信じ、その言葉を慎重に書き記した。そして、袁は再び儒学の勉強を始めた。その後、袁は試験を受け、孔老人が予言したとおりの成績を収めた。袁の出世の道のりは、すべて老人の言うとおりになった。袁はその時、人の社会的地位や富、それを得る時期などもすべて天によって決められているということを知り、世の中のすべてに淡白になり、富や名声に執着することもなくなった。

 

ある日、袁は栖霞山まで雲谷禅師という高僧に会いに行った。袁が部屋に入ると、禅師は驚いて言った。「あなたには、全く貪欲なところが見えません。なぜそのようになられたのですか?」袁は答えた。「私の人生は、孔先生がすべて明確に予言して下さいました。私がそれを変えることはできません。私が貪欲な心を持って何かを求めても、得られないものは得られないのです。ですから、私は清らかで、簡素な心を保っているのです」

 

それを聞くと、禅師は高らかに笑った。「貴方は超常的な人だと思っていましたが、そうでもないですね。単に、現世の世俗的な人のようです」

 

「なぜそう思われるのですか?」と袁は聞いた。

 

禅師は言った。「常人は、決められた運命に従って人生を送ることしかできません。しかし、大きな徳と寛容の心を備えた人物は運命に束縛されないものです。易経の第一章にもあるでしょう。『積善の家には、必ず余慶(よけい)あり。積不善の家には、必ず余殃(よおう)あり』。従って、人生は変えられるのです。善行を積めば福が得られ、悪行を積めば、もともとあった福も減ります。仏教の経典にもありますが、人は福を得たければ得ることができ、息子や娘が欲しければ授かり、長生きをしたければできるのです」

 

袁は、それまで自分が幻想の中で生きてきたことを悟った。そして、高僧の言葉に従い、自分の人生を変える努力をすることにした。自分の言動を正し、たとえ周りに人がいなくても天地に逆らうことをせず、彼と敵対する相手から罵られても冷静に対応し、やり返すことはしなかった。

 

次の年、袁は一番の成績で官吏の試験に合格した。孔老人の占いによれば、彼は3位で合格するはずだった。その後、袁は次の試験にも合格し、官僚への道を進んだ。すでに、袁は定められた運命とは違う道を歩み始めていた。

 

その後、袁は3千の善行を積むことを誓い、善行を積んだら印をつけるよう妻に頼んだ。妻は、袁が貧しい人々に施しをするなどの善行を積むと、カレンダーに丸をつけた。時には、一日に丸が10個もつく日があった。10年の歳月を経て、彼は3千の善行を積み、息子を授かった。後に省の長官になり、1万の善行を積むことを誓った袁は、重税で苦しむ民衆のために、税金を半分に減らすことに決めた。これで、彼は1万の善行をなんなく達成したのである。

 

袁はその後も善行を積むことを欠かさず、寿命が尽きるはずだった53歳を過ぎ、69歳まで健康に生きた。彼は自分の経験を、息子あての家訓「了凡四訓」に残している。【大紀元】

 

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