中国の旧暦新年の連休もあっという間に終わりました。旧正月で帰省していた人たちが今度は逆にUターンするので、また交通機関の混雑が予想されます。
旧正月前後40日間に交通機関の輸送客数は28億人に上る見込みだそうです。この期間中の交通運輸のことを中国語では「春運」といいます。
旧正月前に一度帰省ラッシュの地獄を味わった人々は、帰途でその味をもう一度味わうことになります。もちろん、金持ちは飛行機などを乗ればいいのですが、庶民や農民工、学生などはそうはいきません。はやり、長距離列車を利用することになります。
席があればいいのですが、正月期間中は混雑しているので、席に座れない覚悟をしなければなりません(切符が買えるだけでもラッキーなのです)。
しかも1〜2時間ではなく、10時間〜数十時間も立ちっぱなしまたは通路にしゃがんで、目的地まで我慢する場合もあります。
今は高速鉄道などができ、移動時間がだいぶ短縮できたと思いますが、ひと昔はーー例えば東北部の瀋陽から上海まで確か29時間かかっていました。臥舖(寝台席)が取れれば、かなり楽ですが、「硬座」も取れない正月期間中となれば、まさに地獄の列車の旅です。体験したことのない人には、決してわからない苦痛です。それを中国人は年に最低2回は味わわないといけないのです。
卧铺=寝台列車
wò pù 卧 铺
体の苦痛なら、歯を食いしばって我慢すればそれで済むのですが、貴重品の盗難には常に神経を尖らせねばなりません。こっちのほうが精神的に疲れます。貴重品の所持に気をつけないと悲惨なことになります。
(普通に街を歩いていても、気をつけないと携帯電話がなくなっていたりします。中国人はいつも神経をピリピリさせて、警戒しながら生きています。)
とくに長距離列車の中にはプロのスリが多く、人々がうとうとしている時に手を伸ばして、お金などを盗んでいきます。(私は昔、バスの中で立っている時、バッグをカミソリで切られたことがあります)
そうならないために、中国では昔から「パンツ」にポケットを作って、お金を隠していました。今でも有用なようです。
ただ、今は手作りする必要はなく、「盗難防止パンツ」の既製品が売られているようです。
淘宝(タオバオ)網などでも売られています。「綿素材に大きなポケット、安全なパンツ」とアピールしています。
盗難防止パンツ
fáng dào kù 防 盗 裤
女性用はこんな感じ。1枚18元で、日本円でおよそ340円。
日本の男性のように、後ろポケットに財布を丸見えの状態で入れていたら、5分もしないうちに、なくなるでしょう。中国に行かれる方はくれぐれも気をつけるように。
ちなみに日本でよく売られている盗難防止グッズはこれくらいのものです。
このほかに、中国の長旅で人々を苦しめるのがもう一つあります。「トイレ」です。すし詰め状態の車内ではトイレの前にも人が立っているので、そのうえ人が多い為車内を歩くものままならないため、なかなかトイレには行けません。かといって、10時間以上トイレを我慢するのも過酷すぎます。
そこで誕生したのが、「大人用オムツ」。このオムツは列車の中だけでなく、連休中に車で出かける人たちにとっても必需品です。中国は渋滞が酷いからです。
成人尿不湿=大人用オムツ
chéng rén niào bù shī 成 人 尿 不 湿
もうひとつ、農民工たちに人気なのが涂料桶(ペンキの空容器)。プラスチックバケツに蓋が付いたものですが、中に荷物も入り、蓋を閉めると椅子にもなります。これで立ちっぱなしの問題も解決です。
涂料桶=ペンキの空容器
tú liào tǒng 涂 料 桶
これらは中国ならではの生きるための「知恵」です。日本人はこんな苦労をしなくていいのですから、幸せですね。
自由と目の前の幸せは、大切にしましょう。