現代社会では男女間の「恋愛」を美しいものであると考えており、「性の解放」を当たり前のように考えるようになり、同棲も簡単にする時代になってしまいました。
しかし、昔はどのようにとらえていたのでしょうか。
日本も同じだったと思いますが、昔は、結婚相手はお見合いまたは親同士が決めるもので、「恋愛」というのは存在しませんでした。
古代中国では、男女間については厳しいルールがありました。結婚していない男女が恋愛すれば、それは重大な罪とみなされたのです。現代の価値観からすれば少し厳しすぎるように聞こえますが、次に紹介する古代の物語は、一瞬の欲望が運命を変えてしまうので気をつけよ、と警告しています。
色欲は罪?一瞬の思いが人の運命を変える
清王朝の最後の頃、科挙の試験を受けるために、一人の若者が北京へ向かっていた。彼は旅の途中で宿をとったが、大雨に見舞われ、数日滞在することを余儀なくされた。宿の主は未亡人で、若者が数日滞在するうちに、二人は恋に落ちた。
夜になり、若者は欲望を抑えきれずに、未亡人の部屋を訪ねて扉をノックしようとした。その瞬間、彼の頭にある考えがよぎった。「いや、これはいけないことだ。私は科挙の試験を受けるためにやってきたのだ。もし私が部屋へ入れば、私が試験で一位を取ることは、天が許さないだろう。自分の部屋へ戻らなければ!」若者が部屋へ戻ると、今度は未亡人が部屋の外へ出てきた。「私は未亡人なのだから、夫のために貞節を守らなければなりません。(古代儒教において、未亡人が夫の死後、結婚せずに貞節を守ったならば、女性は天国へ行くと信じられていた)若者を見たら、すぐにそれを忘れてしまって、なんてことでしょう!」未亡人は、自分の部屋へ戻った。
若者は部屋へ戻ったものの、やはり欲望を抑えきれず、再び未亡人の部屋へ行き、扉をノックした。彼女が扉を開ける寸前、若者は部屋から離れた。彼は男女の間違いを犯すことにより、富と名声を失うことを恐れたのだ。古代中国では、不貞な行いをした者は、たとえ頭脳明晰であっても科挙の試験で一位を取ることは天が許さないという言い伝えがあった。
一方、未亡人は若者が部屋を訪れていたことを知り、今度は彼女が若者の部屋を訪ねた。扉の前まで来ると、彼女も戒めを思い出して、また自分の部屋へ戻った。二人はこのようにして、お互いの部屋を何度も行ったり来たりした。
最後に、若者は未亡人の部屋の扉を開けた。しかし、二人は身動きもせず、お互いに迷ったまま、困惑していた。
その時、どこかから大きな声が聞こえてきた。「おい!お前たちは、行ったり来たりして、いったいどっちなんだ。俺のノートはメチャクチャだ!」怒鳴り声と共に、ノートが二人の間に落ちてきた。
若者が恐る恐る拾ってみると、ノートには「徳と不徳の帖」と書かれていた。ノートには二人の名前があり、「科挙の試験で一位」の横にあった若者の名前と、「夫の死後も貞節を守り、天国へ行く」と書かれた未亡人の名前はかき消された跡があった。
二人がよくノートを見てみると、二人の名前の後には「罪は犯されなかった」と書かれ、再び名前が書かれた跡があった。その下には、再び「罪を犯した」と書かれ、横の名前は消されていた。その下に「罪は犯さなかった」とあり、また名前がある。
こうして、何度も消したり書かれたりしたノートは、真っ黒でメチャクチャになっていた。
天は人間の心をすべて把握しており、罪を犯さなくとも、思いは一目瞭然であることを知った二人は、恐ろしくなった。二人は急いでそれぞれの部屋に戻り、再び色欲に心を奪われないよう自分たちを戒めたという。(大紀元)